愧為読書誤一生

ブログという名の読書ノート

筒井康隆

ローラン・ビネ「HHhH プラハ、1942年」

タイトルのHHhHは「Himmlers Hirn heißt Heydrich」の頭文字をとったものだそうだ。意味は「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」。 ハインリヒ・ヒムラーはナチス親衛隊(SS)の全国指導者である。親衛隊内部には親衛隊保安部(SD)がおかれてお…

筒井康隆「霊長類 南へ」

あとがきには最終戦争SFと書かれている。終末SFという言い方もあるが、要するに世界の終わりを描いたものだ。このテーマで書かれた小説は無数にあるのではないか。それほど書きやすいテーマであるのだが、そこは筒井康隆である。ありきたりな内容になる…

安部公房「友達<改訂版>」

安部公房の戯曲。冒頭に本人の作詞による「友達のブルース」の楽譜が載っている。 『夜の都会は 糸がちぎれた首飾り あちらこちらに とび散って あたためてくれたあの胸は どこへ行ってしまった 迷いっ子 迷いっ子』 一人暮らしの男のもとに、九人家族が闖入…

筒井康隆「ペニスに命中」

認知症の老人を語り手にした短編である。このような調子で話が進んでいく。 『食卓の上の置時計がわしを拝んだ。時計とは柔らかいものだが、人を拝む時計というのは面白い。珈琲カップを床に叩きつけて割ってくれと頼んでいるのでわしはそうした。わしがどん…