中上健次
三年間の服役を終えて地元に帰った秋幸は、生まれ育った「路地」が都市化に伴い消滅しているのを目にする。故郷を更地にしたのは、実父の浜村龍造であった。 かつて「路地」であった跡地は、自らをジンギスカンの末裔と称する覚醒剤中毒者のヨシ兄率いる浮浪…
「岬」の続編にあたる。 二十六歳になった竹原秋幸は、土方として、義理の兄の組で現場監督を任されていた。肉体労働に励みながら、繰り返し脳裏に浮かぶのは実の父親、悪評高き浜村龍造についての思いである。 『…だが、人夫たち、近隣の人間ども、いや母や…
中上健次は和歌山県の被差別部落出身である。生まれ育った部落を「路地」と呼び、自らをモデルとした竹原秋幸を主人公に、「岬」「枯木灘」「地の果て 至上の時」の三部作を書いた。 秋幸は血のつながりのない父と兄、そして実母と一緒に暮らしており、異父…