愧為読書誤一生

ブログという名の読書ノート

仏教の思想

無限の世界観〈華厳〉 仏教の思想Ⅵ

華厳と天台の相違点をあげる際に、性起と性具という言葉が使われる。 『天台は「具」の一字、華厳は「起」の一字で表される。個物は普遍的なほとけのいのちを本具するとみるのが天台、あらゆるものは普遍的なほとけのいのちの表現活動であるとみるのは華厳で…

絶対の真理〈天台〉 仏教の思想Ⅴ

天台宗は、中国の南北朝時代から隋にかけての僧侶である智顗を開祖とする。妙法蓮華経(法華経)を根本経典とし、天台法華とも呼ばれる。 智顗は法華経を元に、独自の教説を二つ唱えた。一念三千と三諦円融である。 一念三千は、天台における世界観である。…

認識と超越〈唯識〉 仏教の思想Ⅳ

インドで生まれた唯識思想は、西遊記で有名な三蔵法師玄奘の漢訳仏典により、日本に紹介された。唯識思想は、日本仏教の出発点である。 唯識とは、ただ表象があるのみで、外界の存在物はないとする思想である。我々が目の前のコーヒーカップを見るとき、そこ…

空の論理〈中観〉 仏教の思想3

第三巻は、龍樹(ナーガールジュナ)の主著である『中論』を中心として中観思想が考察されている。 中観思想の根本的な考えは、般若経の「一切は空である」との言葉に表現されている。最高の真実としては、一切のものは空であり、いかなるしるし、つまり言葉…

存在の分析〈アビダルマ〉 仏教の思想2

ブッダは、自らが教える真理を「ダルマ(法)」という語で呼んだ。「アビダルマ(対法)」とは、ダルマに対する学習・研究を意味する。 ブッダ没後、学僧たちは数多くの部派・学派に分裂しながらも、ブッダの教えを1つの思想体系にまとめあげる努力をした。…

知恵と慈悲〈ブッダ〉 仏教の思想1

仏教の思想は、昭和四十年代に角川書店から刊行された全十二巻に及ぶシリーズものであり、現在は角川ソフィア文庫で手に入れることができる。 四巻ごとにインド篇・中国篇・日本篇と分かれている。企画者は哲学者であり、第一部で仏教学者がテーマとなる思想…