愧為読書誤一生

ブログという名の読書ノート

三島由紀夫

三島由紀夫「椅子」

三島由紀夫は祖母の部屋で育てられた。病弱な祖母は、この孫を外に出すのを嫌がり、自分の枕元で音をたてずに静かにさせておいたのだ。短編の前半は、この当時の母親の手記からの引用で占められている。 『「朝から午後まで、うす暗い八畳の祖母の病室にとじ…

森鴎外「杯」

『温泉宿から皷が滝へ登って行く途中に、清冽な泉が湧き出ている。 水は井桁の上に凸面をなして、盛り上げたようになって、余ったのは四方に流れ落ちるのである。 青い美しい苔が井桁の外を掩うている。 夏の朝である。』 一文一文が短く、簡潔で力強い。漢…

ジャン・ジュネ「泥棒日記」

三島由紀夫は評論「ジャン・ジュネ」でこのように書いている。 『サルトルが、ジュネは悪について書いたのではなく、悪として書いた、と言っているのは正しい。』 ジュネはパリで娼婦の腹から生まれた。父親はわからず、母親からも生後七カ月で捨てられた。…